仮設水道の設置は、工事のスムーズな進行に欠かせない重要な工程です。しかし、手続きや施工の不備によって、思わぬ工期の遅延や予期しない追加費用が発生するケースも少なくありません。本記事では、現場で起こりやすい5つのトラブルを取り上げ、それらを未然に防ぐための実践的なチェックポイントを解説します。
仮設水道とは何か?その目的と役割を整理

仮設水道の基本的な仕組み
仮設水道とは、建築工事や造成工事などの現場に一時的に設置される給水設備のことです。本設の水道が未接続の段階で、工事用の水や作業員の生活用水を確保するために用いられます。水源は主に公共の水道本管から分岐して供給されますが、敷地外の道路側にある水道本管との接続には、所定の申請と工事が必要です。
仮設水道の設置は、「仮設電気」や「仮設トイレ」などと並び、建築現場において欠かせないインフラのひとつです。工事の内容に応じて必要な水量は変動しますが、一般的には洗浄作業、コンクリートの練り、水撒き、作業員の手洗いや飲用など、多岐にわたる用途が想定されています。
なぜ工事現場に仮設水道が必要なのか
仮設水道の役割は、単に水を供給することにとどまりません。適切なタイミングでの設置と安定した供給は、工事全体の進捗に大きく関係します。水がなければ一部の作業が行えず、工程全体に遅延を引き起こす可能性があるためです。
また、仮設水道は作業環境の安全性や衛生面にも密接に関係しています。たとえば、作業員が適切に手洗いできる設備がなければ、夏場には熱中症リスクや衛生面でのトラブルが発生しやすくなります。特に、近年では労働安全衛生への配慮が求められる現場が増えており、仮設水道の設置は必須の項目といえます。
仮設水道の設計と施工には、建築スケジュールに合わせた綿密な計画が求められます。水道局への使用申請、設置のタイミング、撤去の手配までを一連で管理することが、現場のスムーズな運営に繋がります。そのため、設置業者との連携や段取りも非常に重要な要素となります。
トラブル①:申請手続きの遅れと不備
仮設水道には事前の申請が必要
仮設水道の設置には、自治体または水道局への「給水申請」が必須です。この手続きは、工事の着工よりも前に済ませておかなければならず、忘れてしまうと工期に直接的な影響を及ぼす可能性があります。特に公共の道路を掘削して水道本管に接続する場合は、占用許可や道路使用許可など、別途の申請が求められることもあります。
よくある申請のミスと影響
現場で起きがちなミスには、申請書類の記入漏れや不備、必要な添付書類の欠如などが含まれます。こうした不備があると、審査が一時停止し、工事開始のスケジュールが後ろ倒しになります。また、水道局ごとに必要な書式や手続きの流れが異なるため、慣れていないエリアで工事を行う場合には、特に注意が必要です。
申請が遅れることで、水道工事が予定日に着手できず、結果として掘削作業の開始もずれ込んでしまうケースが少なくありません。これは、全体工程への影響だけでなく、追加の人件費や仮設設備の延長費用など、コスト面でも無視できないリスクになります。
スムーズな申請のために意識すべきこと
まず、申請に必要な書類や条件を事前に確認し、工事日から逆算して余裕を持って準備を進めることが基本です。また、現場ごとの特性に応じて、必要な添付図面(敷地図、配管計画図、近隣状況など)をあらかじめ整理しておくことも有効です。
加えて、過去に同じ地域で仮設水道工事を行った経験がある業者に依頼することで、手続きの段取りがスムーズに進む可能性が高まります。慣れていない業者では、行政とのやり取りに時間がかかり、思わぬ手戻りが発生するケースもあります。
トラブル②:水道本管の位置確認ミスによる工期遅延

掘削前の本管確認は基本中の基本
仮設水道工事において、本管の位置情報を正確に把握しておくことは非常に重要です。水道本管の場所を誤って認識したまま掘削を開始してしまうと、既設のインフラを損傷するリスクが高まり、予期しない中断や復旧作業が発生する可能性があります。
特に都市部や住宅密集地では、地下に複数の配管が通っていることが多く、水道だけでなくガス管や電線管、通信管などが複雑に交差しているケースもあります。そのため、現地調査と図面照合は、着工前に必ず行うべき工程です。
情報の食い違いによるトラブル
自治体から提供される配管図や台帳と、実際の配管位置が異なるケースも少なくありません。これは、過去の施工記録が古かったり、周辺での他工事により配管が移設されていたりするためです。そのため、提供された情報のみを頼りに作業を進めると、掘削時に本管に到達できない、あるいは想定外の障害物に阻まれるといった事態が発生します。
こうしたトラブルは、作業スケジュールを大きく狂わせるだけでなく、再申請や再掘削が必要になるなど、工事全体のコスト増にもつながります。
ミスを防ぐための現地対応策
本管位置の確認ミスを防ぐためには、事前の現場調査を綿密に行い、必要に応じて試掘や非破壊調査を実施することが有効です。また、地元の工事経験が豊富な業者に依頼することで、地域特有のインフラ配置に対する知見を活かすことができ、トラブル回避に役立ちます。
さらに、複数の情報源(自治体の図面、過去の施工記録、現地の目視調査)を組み合わせて判断することで、精度の高い施工計画を立てることが可能になります。
トラブル③:仮設配管の施工不良による漏水・破損
一見単純でもミスが起きやすい仮設配管
仮設水道の配管工事は、恒久設備とは異なり「一時的に使用するもの」として簡易的に設置されることが多いため、施工が軽視されがちです。しかし、配管の組み立てや接続に不備があると、わずかな振動や圧力変動で水漏れが起こりやすく、結果として現場の作業に支障をきたす事態に発展します。
配管の接続部にズレがあったり、勾配の確保が不十分であると、排水の逆流や配管内部の圧力過剰が起こることもあります。こうしたトラブルは早期には目に見えず、しばらく経ってから漏水が発覚するケースもあり、工期遅延や補修費用の増加を招く要因となります。
よくある施工ミスの背景
仮設工事は工程の初期段階で行われることが多く、他の工種との並行作業になる場合もあります。このため、施工が急がれ、十分な確認作業がなされないまま完了として扱われることがあります。また、現場に経験の浅い作業員が配置されると、部材選定や接続方法に誤りが生じることがあり、配管の耐久性に問題が残ることになります。
また、仮設とはいえ適切な材料を使用する必要があります。例えば、雨風や車両の通行による外的要因を想定せず、屋外設置に不向きな素材を使うことで破損や劣化が早まるケースも見られます。
配管不良を防ぐためのチェックポイント
仮設配管の施工品質を確保するためには、施工完了後の水圧試験や漏水確認を必ず行うことが基本です。さらに、配管経路に応じた勾配の確認、接続部の固定状況、使用部材の適合性といった技術的要素を一つひとつ丁寧にチェックする必要があります。
また、仮設とはいえ配管ルートは将来的な本設配管の動線や他設備との干渉も見据えた設計が求められます。現場監督や設計担当との連携も欠かせません。
仮設配管における「一時的だからこそ丁寧に」という視点が、後々のトラブル防止に大きく寄与します。
トラブル④:行政手続きの抜け漏れによる工事中断
見落とされがちな仮設水道に関する申請手続き
仮設水道の設置には、地域の水道局や自治体に対する申請が必要になる場合があります。こうした行政手続きは、一般的な建築確認や上下水道の本管接続とは別に扱われることが多く、申請のタイミングや書類の種類も自治体ごとに異なるため、現場ごとに内容を正確に把握しておく必要があります。
これを怠ると、いざ仮設水道工事を着手しようとした際に、許可が下りておらず作業ができないという状況に陥ることもあります。さらに、無許可での工事が発覚した場合、工事の中断や是正指導が入るケースもあるため、事前準備が極めて重要です。
よくある抜け漏れのパターン
行政手続きのミスとして多いのが、「どの機関に申請するのか」が曖昧なままスケジュールを進めてしまうケースです。特に、仮設水道の利用期間や供給量によって、申請ルートが変わる地域もあり、過去の工事と同じ手順では通らないことがあります。
また、施工会社に手続きを一任したつもりで、実際には担当が誰も動いていなかったというケースもあります。責任の所在が不明瞭なまま進行してしまうと、工事着工前や検査段階で問題が表面化し、スケジュールが大幅にずれ込む原因になります。
対策としての事前確認と業者選定
このような手続きトラブルを防ぐためには、設計段階または発注前に、関係する行政機関の手続き要件をリストアップし、いつ誰が申請を行うのかを明確にしておくことが効果的です。申請書類のひな形や所定の図面が必要なこともあるため、準備にはある程度の時間と手間がかかることを見越した工程管理が求められます。
また、仮設水道工事に精通した施工業者であれば、地域の水道局との連携や過去の対応実績から、スムーズに手続きを進められる場合があります。業者選びの段階で「行政対応力」も評価基準に加えることが、リスクの低減に直結します。
トラブル⑤:撤去忘れ・原状回復不備による追加費用の発生
仮設水道撤去の見落としがもたらす問題
仮設水道の使用が完了した後、その設備を速やかに撤去し、元の状態に戻すことは基本的な工程の一部です。しかし、この撤去作業や原状回復が手配されないまま放置されるケースは少なくありません。現場では本工事が優先されるため、仮設関連の対応が後回しになることも一因です。
撤去を忘れると、設備がそのまま残置されてしまい、次の工程や完成後の引き渡しに支障をきたします。とくに、敷地外の道路や歩道に仮設配管が及んでいる場合、自治体からの是正指導や罰則を受けるリスクもあります。
原状回復の不備が追加費用を招く仕組み
原状回復の不備も見逃せないトラブル要因です。たとえば、掘削した地面の舗装が不完全だったり、仮設管の撤去後に土砂が残っていたりすると、発注者側がやり直しを依頼することになります。その費用は当初の見積もりに含まれていない場合が多く、追加請求や工程の再調整が発生する原因になります。
また、原状回復の品質が自治体の基準を満たしていない場合、再施工を求められるケースもあります。これにより、時間とコストの両面で大きなロスが生じる可能性があります。
対策:撤去と回復までを見据えた契約と確認
このようなトラブルを回避するには、仮設水道の契約時点で「撤去・原状回復の範囲と責任」を明確に定めておくことが重要です。契約書に記載がないままだと、施工完了後に責任の押し付け合いになることがあります。工程管理表の中にも、仮設水道の撤去予定日や確認項目を組み込むとよいでしょう。
さらに、撤去前には現場立ち会いによるチェックを行い、配管や接続部が完全に取り外されているか、地面が適切に戻されているかを確認する体制づくりも有効です。経験豊富な業者であれば、こうした後工程への配慮も標準業務として対応してくれます。
設水道トラブルを防ぐために今すぐ確認すべきポイント
仮設水道に関わるトラブルは、発注者と業者の情報共有不足や、確認工程の甘さが要因となって発生します。申請手続き、配管ルートの選定、工程管理、現場での連携、そして撤去や原状回復まで、各段階での見落としが後々のリスクにつながります。これらを未然に防ぐためには、業者選定の時点から信頼性と対応力を重視し、事前の打ち合わせを丁寧に行うことが重要です。仮設水道は、施工全体の土台を支えるインフラでもあります。だからこそ、些細な判断ミスが工期やコストに影響することを意識して取り組むべきです。
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